星の創りし双子-L-ilith<第1章>

 インジェンス共和国とドゥルム帝国の国境近くに設けられたダーセン要塞は山脈に挟まれた街道にあり、ドゥルム帝国の進行を防ぐように配置されていた。切り立った南北の山岳帯からは攻められることがなく、正面には硬く巨大な鉄の扉と見張り台が作られ、昼夜を問わず歩哨たちが見張りを続けていた。

 トスッ。

 音もなく、三人いた歩哨は同時に倒れた。何かが刺さった首に手をやることもなく、一瞬で膝から崩れ落ちた。

 影になっている部分から全身黒づくめの男女数名が現れた。彼らの目は八つあり、それぞれ手が四本ずつあった。蜘蛛型のドゥルム帝国特殊部隊。彼らはそのまま音もなく散開し、砦の兵たちを消し始めた。

 ノーラ女王は、それまで寄せ集めだった軍隊を、各部族の生態に合わせて再編成した。白兵戦に優れた種族、隠密に優れた種族、後方支援に優れた種族といった具合に各部族の能力を生かした部隊を作り、訓練することで、それまで取れなかった戦術が取れるようになった。ラクネアと呼ばれる彼ら蜘蛛の一族は砦の左右にある山に分け入り、森を抜けると易々と砦の死角から外壁にとりつき、内部に侵入した。

 半時を待たず、砦の兵四百余名は息を引き取り、正門は大きな音を立て開門した。

「よくやった。ラクネアの長よ。そなた達の誉れ、末代まで語り継がれよう」

「ありがたきお言葉」

 女王は配下の武勲を称えると、言葉もなく左手を前に振った。

 同時に地響きを立てて、万の軍勢が前進を始めた。

 女王と王女を乗せ、巨大な甲虫が引く戦車はゆっくりと進んでいく。

「お母様……」

 アミッシは蒼ざめた顔で母に問うた。

「なんだ」

 母であるノーラは娘の顔に目も向けず応える。

「これは正しいのでしょうか? 戦以外の正解はないのでしょうか?」

「少なくとも私は知らぬ。この回廊を抜けた後に肥沃な土地がある。それなくば民は飢えるのだ。なにもリグナム共を攻め滅ぼそうというのではない。十分に我々の力を見せて、国土の端を譲ってもらおうという腹だ」

「ですが、戦えば憎しみが残ります……」

「ふん。お前はここから私と戦を見よ。その頭でこれを防ぐ手立てがあるなら、いつでも私は王座を譲ろうぞ」

 アミッシははっと母の顔を見た。女王もまた戦は本意ではないのだ。飢える民を救うために仕方なく……ということなのだろう。

 アミッシは顔を上げると、この現実から目を背けまいと思った。

 宣戦布告がインジェンス共和国に伝わって2時間が経った。ドゥルム帝国軍の第一師団は進軍を続けており、陽は既に落ちていた。

 女王の指示通り新月の夜を狙っての進軍で砦を制圧し、さらに雨が降り始め、女王の判断をさらに確実なものとしていた。

 一方共和国軍は相手の移動速度から、メラルー台地で迎撃すると決定。ドゥルム軍一万に対して歩兵、騎兵、弓兵を一万五千用意し、移動を開始した。大地の上部分を陣取り、兵たちは接敵に備えた。

 夜明け前、空が青くなり始める直前にドゥルム帝国の兵端が姿を現した。弓兵たちが矢をつがえ、掛け声を待っていいた瞬間それは起きた。

 地平線に紫色の光が横一列に走った。次の瞬間、巨大な火の玉が歩兵達に降り注いだ。

「なんだ!?」

 トルアは怯える甲虫を何とか諫めると、火球の飛んできた方向を見た。

再び紫の光。

 そして火球が降り注ぎ、兵達は逃げ惑った。

「陣形を崩すな、前進を開始する! 負傷兵の収容急げ!」

 カリオールの冷静な声に兵達は落ち着きを取り戻し、前進を開始した。

「兄さん、止まっているとやられる」

 トルアは頷くと虫兵を進め始めた。歩兵たちは走り出し、虫兵の速度と変わりなくなっていく。弓兵達は進行方向に矢を射り始める。

 ドゥルムの歩兵達も走り始め、戦端が開かれた。ドゥルムの歩兵は身長3メートルの巨人もいれば、敏捷な獣人もいる。

 それに対してリグナムは鉄の鎧と剣でそれに立ち向かう。鎧を着た歩兵が宙を飛び、巨人に無数の矢が刺さる。獣人がリグナム兵の首を噛み千切り、その獣人を虫兵が両断する。

 激しい切り合いが続く中、突如ドゥルムの兵が何人も空中に飛んだ。

 トルアだった。甲虫と共に敵の中央に斬りこみ、その力で次々と相手をいなしていた。

「ドゥルム兵恐るるに足らず!」

 トルアが剣を掲げて叫ぶと、鬨の声が響いた。インジェンス兵は一気に前進し、ついに敵の後衛が見えた。

それは我々の世界の象のような生物だった。しかし、顔の部分はなく、巨大な口のような器官があり、そこに紫の光を湛えていた。

「あれがさっきの! 魔法生物か?」

 トルアが敵を斬りながら看破した。

それはドゥルムの魔法部隊が作り出した魔法兵器だった。通常ドゥルムの使う魔法はカエルレウム鉱石の力を取り出し、それをエネルギーに変換する。だが、そのエネルギーは術士によって強度が異なるのである。

そこで女王はエネルギーを安定させるべく、魔力炉のような生物「クアル」を造らせた。術士たちはその生物にエネルギーを注ぎ込んで、砲撃させていたのである。クアルによって制御されたエネルギーはさらに威力を増すことが確認され、実戦に投入された。

クアルの口から出ている紫の光が強くなる。

「こいつは……まずい!」

 トルアは甲虫を跳躍させ、火球を防いだ。

 ゼロ距離で平行に打たれた火球は敵味方問わず大きな被害を出した。

「何をしている! クアルは下げさせよ!」

 女王の号令でクアルは後ろに下がり、ドゥルムの術士が細かい光の矢を打ち始めた。

「女王陛下。どうかこちら御下がりください」

「グレクリオか。未だ問題なかろう」

「恐れながら陛下、ここでは流れ弾の危険もございます。どうかお下がりを。後方に陣幕を設けております」

「分かった。一度私は下がるとしよう」

「ありがたきお言葉」

 その時、クレイベウスの手に鈍い光があった。

 トルアは一度自陣に戻り、弟と合流した。

「戦況は?」

 腕の傷に包帯を巻いてもらいながら、トルアはカリオールに聞いた。

「兄上が大きく分け入ったのがあちらの計算外だったようですね。あの砲撃が止まったので、こちらが有利になりました」

「そいつはよかった。無理したい甲斐があるってもんだ」

「それともう一つ」

「……?」
「敵の、ドゥルムの女王が討たれたという伝令が」

「!?」

「図ったかクレイベウス……」

 ノーラは縦に大きく斬られた腹を抑えたまま宰相を睨んだ。

「はい。何もかも予定通りでございます」

「……者共……謀反人である! いますぐ捕えよ」

 ノーラが声を出しても、周りの兵は微動だにしなかった。

「彼らは私の下僕ですので……あとはアミッシ様を……」

 ノーラはくわっと目を見開くと娘の方を見て言った。

「逃げよ、アミッシ! 生きのびて国を救え!」

 怯えていたアミッシは我に返り、森に向かって跳躍した。

 数人の歩兵が止めようとしたが、ノーラがダガーを投げ、それを許さなかった。

 早朝の雨は強くなり、アミッシを隠した。彼女は必死に戦場を駆けていた。

 その前に、一匹の甲虫が飛び出した。トルアだった。

 アミッシはそれを見て敵と分かっていたが、こう叫んだ。

「どうか、お助けください!」

斬りかかってくるかと警戒していたトルアは虚を突かれた。

「へ? 戦争中だよな……?」

 アミッシはトルアの足元に駆け寄り、後ろを振り向くと彼女を追ってきた獣人兵士が数人現れた。

「訳ありか……。わかった、話を聞こう」

 アミッシは雨が嫌いだった。外に出かける事は少なかったが、屋敷で読書をする時でも、外は晴れている方が嬉しかった。だが、今は何より雨がありがたいと思った。

「あのお怪我が……」

「だい……丈夫……さすがに虎人間と一対四はきつかったか……」

 トルアはわき腹に大きな切り傷追っていた。彼とアミッシを乗せた甲虫はゆっくりと大森林を南にある山の方に進んでいく。

「自陣に戻ればいいんだけど、君……イグニスだよね。多分いろいろまずいことになるから……なんとか隠れられるところへ……」

 ここまで言ってアミッシは気を失った。騎手を失った甲虫は岩肌に向けてまっすぐ進んでいく。

「危ない!」

 アミッシはなんとか手綱をトルアの手から奪おうとしたが、少し遅く甲虫は岩肌にぶつかった。

はずだった。甲虫はそのまま岩の壁を通り抜け、開けたところに出た。

「……ここは?」

洞窟の中の様だった。だが、天井にあたる部分は白く光り、中を昼間のように照らしていた。雨が遮られ、静かになったからか甲虫は停止した。

アミッシはトルアを抱えてゆっくりと虫の背から降りる。そこは山の中が丸くくり抜かれた空間だった、地面や壁は殆どが岩だが、たくさんの草木が生え、小川さえ流れていた。

「庭園……?」

 アミッシの言葉にそんな言葉が浮かんだ。かつて図書室で読んだ書物に書かれていた古代の種族ツリーフォークの神殿。許されない者は外から入ることはできず、中は一年を通して生物に対して過ごしやすい環境となっている。一万年前は世界中に存在していたという言い伝えがあるが、お伽噺、伝説の類とされていた。

 アミッシは枯れ草を集めて自分の服を被せ、簡易のベッドとした。トルアを寝かせ、果物を集め、中を食べた果物の殻に水を汲んだ。

 薬草も豊富にあった。アミッシは魔法を併用してトルアを熱心に手当てした。そして数日を経て、トルアは目を覚ました。

「そうか、ドゥルムの女王は殺されちまったのか……」

「はい。同時に部隊は撤退を開始したので一時戦闘は収まっていると思います」

「だが、アミッシさんも狙われてるんだろ? だったらドゥルムに戻るわけにもいかないし、うちに来るのも立場難しすぎるしな……」

 ふたりは話し合い、しばらくここに身を潜め、様子を見てインジェンスに戻る。そして王女の名前でドゥルムを奪回することにした。  そして、ふたりが庭園に隠れ住み一年が過ぎ、この星に初めての双子が誕生した。

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